剣岳・小窓尾根~早月尾根(5月2日~5日)

GWの剣岳を、小窓尾根からの登頂に成功した。マッチ箱を越え、小窓ノ王、チンネが目に入った時、残雪の剣岳の迫力に圧倒された。小窓尾根の核心部は終わっても、本峰までの主稜線は緊張の連続だった。池ノ谷ガリーの雪面は氷化している部分もあり、慎重に上がる。長次郎のコルから最後の雪壁を登り、本峰が間近に迫ると感情が高ぶってくる。360度展望の山頂が待っていてくれた。早月尾根上部の岩、氷のミックス帯を気を抜かずに下降。雷鳥が多く、たくさん出会う。馬場島へ近づくと、花畑がきれいに咲いていた。無事に下山できたことを、同行のメンバーに感謝したい気持ちで一杯になった。

メンバー:8名(小窓6名、早月2名) #5/1 22:30 上野集合 急行能登にて富山へ。

#5/2 馬場島~小窓尾根1800m

馬場島で登山届を提出し、出発準備。日差しが強く、パッキングしているだけでも体が熱くなる。

早月尾根組の会長と吉沢さんと別れ、6名で白萩川を上がる。

第一関門。取水口から始まる1回目の渡渉。

ここでは靴を脱がなくても大丈夫だったが、この先右岸に戻るときは、下はパンツ一丁になり渡渉。水が冷たすぎて足が痛くなる。

タカノスワリ、池ノ谷出合いを左へ進み、小窓尾根取り付き目印の雷岩へ。取水口から4回の渡渉が必要だった。

 

 

夜行の疲れから、初日はいつもつらい。雷岩でちょっと長めの休憩。

小窓尾根へ。長い急登。尾根に上がるまで結構長かった。

 

1600mの展望台。親切な方に声をかけられ、撮ってもらいました。三ノ窓、主稜線が見えた。まだまだ高く遠い。それにしても日差しが強かった。

山行1日目のテン場1800m。下に1パーティー張っていた。この日、小窓尾根に入ったのは5パーティーほど。雑煮を食べ、日が暮れると早々に就寝した。 #5月3日 1800m~マッチ箱ピーク先2650m 晴れ

4時起床。 6時出発。一時間ほど歩くと、顕著な岩峰ニードルが現れる。ニードルまでの雪壁も立っている。これまでのアプローチと違い、小窓尾根の核心部に入っていく感じがした。尾根は切り立ってきて、スリップは許されない。三点確保で、ゆっくりと、落ち着いて登ろうと自分に言い聞かせた。

 

 

ニードルは取り付かない。

岩のリッジからニードルの右側へ。ドームのコルへ斜め懸垂する。

#ドームの頭。

ドームは、左から急な雪稜を上がった。

#ドームからマッチ箱を見上げる。

ドームを下りコルへ。右へトラバースし、右側斜面の急な這松登り。ピークへでる。少し雪稜を歩き、馬ノ背リッジをザイルを張って通過。その先、もう1ピッチ。尾根に上がるまで、平良さんと藤井さんにザイルをのばしてもらいました。

剣尾根。

馬ノ背リッジ

 

 

 

 

 

 

もう少しでマッチ箱のピーク。その前に、急斜面のトラバースから、氷化した急な雪壁の登りがあったので、ザイルをだしてもらい、アイスクライミングのように突破する。山行2日目のこの日は、ザイルを4ピッチだしました。

問題の急な雪壁。下はスッパリ深い谷底になっています。トップで上がった藤井さんにザイルをだしていただきました。

しんがりの長谷川さん。マッチ箱のピークを越えたあたりか、傾斜が緩んでくる。

小窓尾根2650m。14:30着。北方稜線の景観がすごかった。5月は日も長いので、三ノ窓まで行く時間は十分あったが、静かで、眺めのよいこの場所を2日目のテン場とした。

 

小窓尾根の核心部を抜けた安堵感からか、お酒も入り、テントはにぎやかだった。明日は、天候が崩れるという情報があったので、チンネ左稜線の偵察は、取りつき場所程度にし、早月尾根で待っている、会長たちと合流することになった。 #5月4日 小窓尾根2650m~剣岳~早月尾根1900m

昨日と同じく4時起床。6時出発。いよいよ今日は北方稜線に入り、本峰を抜ける。歩き始めると、三ノ窓から池ノ谷乗越までの「池ノ谷ガリー」に雪がべっとりついているのが見える。今朝の雪の状態だと、長大な滑り台化しているようで、恐怖を感じる。できればこんなところ登りたくはなかった。しかし、そうも言ってられず、ゆっくり、30分か、それ以上かけ慎重に登った。池ノ谷乗越で休んでいると、八ツ峰を登攀しているクライマーがフィナーレを迎えようとしていた。カッコイイ。いつか、もっと力をつけて、自分も。と、また訳のわからぬことを考えてしまう。そして、ここから長次郎の頭に登り、あとは、剣の山頂へ行くだけだ。

 

池ノ谷ガリー

三ノ窓へ懸垂

懸垂後のトラバースも、安全第一でロープを張りました。

 

三ノ窓からチンネの岩壁を望む。

池ノ谷ガリーの急な雪壁を登る。

八ツ峰を登攀するクライマー。

 

長次郎のノ頭へ。奥に本峰が見えた。

 

ここからコルへ下り、最後の難所と思われる雪壁を登る。

 

 

最後の雪壁。上の方は少しかぶっている。

やった~ ほんとに、ついに、着きました!剣岳の頂。お疲れ様です。

 

北方稜線。その先にある毛勝三山。

11:00下山開始。早月尾根上部の岩場、ここまできてスリップはしたくない。慎重に下る。

 

最後の懸垂下降。会長たちの待っている早月小屋まであと少し。

13:45 早月小屋着。会長と吉沢さんに久しぶりに再会。お待たせしました。馬場島まで行けないこともないが、岳樺ACらしく、小屋で酒を買い込み、1900mくらいまで下り、小窓尾根が見える最高の展望台にテントを張った。

#5月5日 早月尾根1900m~馬場島

マッチ箱の側面から朝日が昇る。6時起床。帰りも夜行の急行能登で帰ることになりのんびりです。最終日の今日も日差しが強い。終わってみると、天候に恵まれた山行でした。無事に馬場島へ。警備隊に下山届けを済まし、タクシーでアルプスの湯へ直行。温泉でみんなで昼寝。そして富山で電車の時間まで打ち上げでした。6日早朝帰京。東京に着くと雨が降っていた。

 

 

記録  5/1 上野集合夜行発 5/2 馬場島~小窓尾根1800m 5/3 1800m~2650m 5/4 2650m~本峰~早月尾根1900m 5/5 1900m~馬場島 夜行電車 5/6 早朝帰京 早月尾根で最後の懸垂をし、早月小屋がもう少しのところへ見えたとき、やっと緊張感がゆるんできた。剣岳はほんとに急峻で、尾根が切り立っている。昨年のGWの鹿島槍東尾根よりも、細かく神経を使うルートだった。ザイルをだすと安心感があるが、フリーで緊張する場所が多く長い。やっぱり他の山にはない厳しさを剣から感じることができました。だからこそ、登頂したとき、あんなにもうれしいのだと思う。また、この山に、どこからか、みんなで挑戦できたらいいなと思いました。  記録K.H